母と子ネコの愛情物語 ミケネコの愛

作:佐藤 良治  画:中富 清子

人間は本来の親子の絆をうしなってしまったのか。 ネコの子育ての凄さに圧倒される実例を紹介し、少年少女の心に動物の親子愛の素晴らしさを教えてあげたい、その一念で発刊にふみきりました。もしもプレゼントなどにご利用していただけるならば下記に直接お申込み下さい。

<申し込み先>
動物医療センター春日

 住  所
福岡県春日市1-92

 電話番号
(092)501-3929

 価  格
一冊 500円(税込み)


第一話   <禁転載>


母ネコのチビは、昨日4匹の仔ネコを産みました。みんな元気で、乳を飲んでいます。
町工場の屋根裏がチビたちの家です。工場の長男一家は、ネコが大好きです。しかし、おじいさんは、このままネコが増えたら困ると思っています。数日後、雨の日の夕方に、おじいさんは仔ネコを親のチビからむりやり引き離して、段ボールに入れ、となりの小川に流してしまいました。そして一夜が明けました。
長男一家のこども達が屋根裏のチビを見に行って、びっくりしてさけびました。母ネコのチビは、雨でずぶぬれ。仔ネコ4匹は泥だらけ。しかし元気に乳を飲んでいました。母ネコのチビが一晩かかって、川の中州にひっかかた段ボールから仔ネコを一匹ずつくわえて、救出したに違いありません。
おじいさんは仏壇に手を合わせて、仔ネコを母親から引き離したことをあやまりました。そして今は母ネコもメスの仔ネコも避妊手術をして、親子5匹、元気にくらしています。
  (おわり )


第二話    <禁転載>


6月にしては少し肌寒い梅雨の日曜日。
朝はやくから,台所でお母さんが朝ごはんの準備をしています。あたりに、みそ汁のいい匂いがただよってきました。
ふとみると、庭先に1匹のミケネコが迷いこんできました。ひどくやせていて、弱々しく、やっとのことで歩いているような足どりです。雨にぬれた体には、肋骨がくっきりとうきあがっています。
台所からそれを見つけたお母さんは、かわいそうにと思い、たきたての温かいゴハンにかつお節をかけて出してあげました。ミケネコは鼻をヒクヒクさせながら台所に入ってきました。けれどもミケネコは、ゴハンのにおいを嗅ぐだけで、食べようとはしません。
 (やっぱり人間のごはんじゃダメなのかしら)
そう思ったお母さんは、今度はキャットフードを出してあげました。だけどそれでもミケネコは、ちょっとなめただけで、すぐにやめてしまいます。
 (あらこれでもダメなのね)
考えたお母さんは、朝ごはんのために用意していた焼魚をだしてみました。
 (これでダメなら仕方ないわね)


と、お母さんはやりかけだった朝ゴハンの準備に戻りました。いつのまにかミケネコはいなくなり、焼魚もなくなっていました。
 (あら、やっぱり焼き魚が好きだったのね)
それを見たお母さんは,ちょっとぜいたくな猫ね、と思いながら、台所の火を止めて、娘の友紀ちゃんを起こしに行きました。
次の日、台所で仕事をしているお母さんがふと見ると、またあのミケネコがやって来ていました。「あら、今日もきたのね。じゃあ今度はちくわをあげるわ」
そう言ってお母さんは、ちくわを出してあげました。
するとミケネコはさっとちくわをくわえて塀のむこうへ消えていきました。
 (ちくわも気に入ったみたいね)
今度は、ためらうことなくちくわを持っていったミケネコを見て、お母さんはそう思いました。また、次の日も、ミケネコはやってきました。
 「もうあなたの欲しいものはわかったわ」
そう言ってお母さんは、ちくわを出してあげました。ミケネコは昨日と同じように、ちくわをくわえると、台所をでていってしまいました。


こんな日が、何日か続いたある日、あいかわらずやせているミケネコの後にまるまるとした5匹の仔ネコがついてきました。仔ネコ達は、ミャアミャアと、ミケネコに甘えています。どうやらミケネコは、仔ネコ達の母親のようです。
それを見たお母さんは、ミケネコが、ゴハンやキャットフードを食べなかったわけに、ようやく気づいたのです。ミケネコはぜいたくを言っていたわけではありませんでした。自分は食べたいのに、自分のこどもにもって帰られる食べ物が出てくるまで待っていたのです。お母さんの目から、涙がぽろぽろこぼれおちました。自分の身をけずってでもこどもを守ろうとする気持ちが、お母さんには痛いほど分かったからでした。
 「お母さん、どうしたの?」
ぽろぽろ泣いているお母さんを、心配そうに友紀ちゃんが見上げます。そんな友紀ちゃんを、お母さんはぎゅっとだきしめました。
 (ネコだって、これだけこどものことを思っているのに...)
仔ネコ達のためにがんばったミケネコをみていると、お母さんは、世の中に、自分のこどもを傷つける母親がいることが、とても悲しくなりました。
 (動物の中で、一番かしこいはずの人間が...)仔ネコ達は庭でなかよく遊びまわっています。それを、お母さんのミケネコが、やさしく見つめていました。
   (おわり )